この途中下車印はだ円の中に駅名が書いてあるだけのシンプルな構成ですが、様々な駅のものを集めてみると、変わった様式のものがあることがわかります。網羅することは出来ませんが、少し紹介させていただきます。
山陰本線の東萩駅の途中下車印です。「東萩さん」の認印をシャチハタで作成してしまったもので、だ円形という様式を逸脱してしまったものです。東萩さんという苗字はあまり聞きませんが、特注の認印として作成している駅も多くありそうです。
途中下車印に書かれる駅名は、漢字であることが大多数ですが、長い駅名や複雑な文字の駅名は略字やひらがなを使うことが認められています。掲載した左の画像は西鹿児島駅(鹿児島本線、現在の鹿児島中央駅)の途中下車印ですが、「西鹿」と略されています。また、ひらがなにしてしまったのが右の画像の富士駅(東海道本線)のような例です。
京都駅(東海道本線)の途中下車印はカタカナ表記になっていました。先に紹介させていただいた、略字やひらがなを使うことが認められているのは、JRの部内のきまりで定められていることですが、カタカナ表記もそのきまりの範疇で運用されているのでしょうか。
また、途中下車印に限った話ではなく、乗車券などに表示される駅名という問題も含んでいますが、JRには同一の駅名が複数あることがあります。掲載した左の画像の金山駅がその一例で、愛知県の中央本線と北海道の根室本線に2駅あります。このような場合、駅名の前にかっこ書きで線名を書くきまりになっており、「(中)金山」「(根)金山」と表記することで区別しています。右の画像の豊野駅(信越本線)の例は、複雑な文字の駅名をひらがな表記としたものとのあわせ技ですね。
この同じ駅名を回避する方法として、その地名の前に旧国名などを冠する場合があります。昔話ですが、車内補充券を手書きで発行していた時代には、このような駅名を正式な漢字で書こうとすると大変なため、このような旧国名などはひらがなで書くことが認められていました。これを途中下車印に応用した例が、掲載した信濃川上駅(小海線)のものです。
異端な様式の途中下車印といえば、最近JR西日本の一部の駅で用いられている日付入りの途中下車印です。掲載した画像は金沢駅(北陸本線)のものですが、スタンパーと見間違いそうな様式です。先に紹介させていただいた通り、JRのきまりとしては途中下車印はだ円形の中に駅名が書かれているものということになっており、ここまでデフォルメしてしまっていいものだろうかと戸惑います。
また、途中下車印の様式と直接関係する話ではありませんが、以前の途中下車印は、スプーン型と呼ばれるような印面とスタンプ台が一緒になった小さな金属製のものできっぷを挟み込んで押すタイプのものが主流でしたが、最近は最初に紹介させていただいた東萩駅の例のように、シャチハタタイプのものが増えています。掲載した佐原駅(総武本線)の途中下車印には、周囲を大きく取り囲むようにインク跡がついていますが、シャチハタタイプのものでは外枠がくっきりと写りこんでしまうことがあり、少しがっかりするタイプの途中下車印でしょう。